シーシュポスの勝利

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zoom RSS フォグラントの討伐

<<   作成日時 : 2007/05/26 22:09   >>

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 裏切り者は殺せ!
 神々や竜がいた時代のお話ですが、人を裏切った者は殺されても仕方ありませんでした。むしろ裏切り者は積極的に殺すべきといわれていたのですが、フォグラントという若い男はそうしませんでした。
 フォグラントはある王国の地方領主の息子で、あるとき父親といっしょに王都にいきました。すると故郷の領土では側近が反乱を起こしたので、息子はすぐに戻って内乱を収めました。その手腕は素晴らしくて誰も死にませんでした。
 人々はこの若い御曹司に喝采を贈ったあと疑問をぶつけました。なぜ主の信頼を裏切って反乱を起こした人間を処刑せずに国外追放で済ませてしまったのかと。フォグラントは首を横に振って答えませんでした。
 父親の領主も問いました、なぜ不埒な裏切り者を殺して今後このようなことがないように警告を発しなかったのかと。フォグラントは答えたがりませんでしたが、何度も訊かれるとついに折れて、目を伏せながら「いやだからだ」と答えました。領主はフォグラントは殴りました。
 この話は王都まで流れていき、王はフォグラントに出頭を命じました。というのはフォグラントはお姫様の結婚相手とされていたので、王はフォグラントの人心掌握をせねばならなかったからでした。
 王はなぜ許したのかとフォグラントに問いました。フォグラントはうつむいて答えようとしませんでしたが、王の前であったのでいつまでも黙っていることはできませんでした。「殺すのがいやだから追放にした」とフォグラントは王に答えました。
 王は問いました。もしあの側近が再び領地を訪れて復讐することを考えなかったのかと。
するとフォグラントは、何度でも打ち破ってみせると答えました。実にはっきりとした調子の声でした。
 王はフォグラントに慢心を見出したので、その心を砕いてやろうと考えました。ちょうどこのとき、砂漠の民から援助の依頼がきていたので、フォグラントにやらせることに決めました。
 命令を受領をしてフォグラントは砂漠に向かい、砂漠の民の長から内容を聞きました。長のいうには行方不明者になる人間がいるので、原因を調査してほしいそうでした。砂漠の民はオアシスからオアシスに移動する生活を送っているのですが、オアシスに寄った晩は必ず人が消えるそうでした。
 フォグラントはとりあえず砂漠の民と行動をともにしました。オアシスを巡っているとなるほど、どうやら人が消えるようでした。フォグラントはある日夜警をしました。
 すると夜空に光るものが見えました。流星かなとフォグラントはおもいましたが、よくみると糸のようでした。夜空から長大な糸が垂らされているようで、さきをたどってみると、地上まであるようでした。さらによくみると人間につながっていました。
 糸は眠っている人間の足につながっていて砂の上を引きずっていました。フォグラントは怪しんで糸を切ってやろうかとおもいましたが、もう少しだけ様子をみてみようとおもいました。すると眠っている人間が真っ逆さまに釣り上げられました。
 フォグラントは「猫召喚!」と一喝。夜陰から猫が飛び出し、爪をふるいました。
 糸は切られました。釣り上げられた人間はどさりと落ち、目を覚まして、ぼんやりした顔であちらこちらを見回しました。
 翌朝、フォグラントは砂漠の民にオアシスから退去するように依頼しました。砂漠の民は了解してオアシスから立ち去りました。オアシスにフォグラントと猫だけが残りました。
 オアシスのそばに椰子の木があったのでフォグラントは横になりました。
 そうやって空をみていると、太陽でないものが光りました。いよいよかとフォグラントはおもいました。すると空の奥から糸がするすると降りてきてフォグラントの足にからみつきました。フォグラントは糸を引っ張りました。
 糸は引っ張れば引っ張るほど伸びたので、フォグラントは糸を外して歩き始めました。
 フォグラントの影から猫がでてきました。この猫はフォグラントを気に入っていてずっとそばにいました。猫は口を開きました。
 「お前、糸を捨てないのか」
 「捨てない」
 「どうするんだ」
 「こうする」とフォグラントは答えて、目の前に現れた巨石、巨人の頭のような石に糸をくくりつけました。フォグラントは岩の影に座り込み、猫もその隣に座りました。
 そのうちに日が暮れて星が現れ、三日月が昇りました。すると巨石に巻きつけられた糸がピンと張られてぐらぐらと揺れ始めました。フォグラントは動じずに糸の先、三日月を見上げました。糸はいよいよ切れそうなほど張り詰め、フォグラントの見てる前で、三日月の影の部分から巨大な蜘蛛が姿を現して巨石を引っ張り始めました。
 蜘蛛は巨大でしたが、巨石を動かすほど力強くないようでした。フォグラントは蜘蛛が疲労したところを見計らって糸を引っ張りました。すると蜘蛛が落ちました。砂煙が盛大に上がり、きらきらと地上に降り注ぎました。
 フォグラントは月光に照らされた砂漠を歩きました。そのあと猫がおいました。
 三日月から落ちてきた巨大蜘蛛はひっくり反って、もがいていました。フォグラントは刀に手をあてましたが、殺すつもりが失せて、いいました。
 「きみはしゃべれるか」
 「しゃべられる。お前かおれを落としたのは」
 「ああ。人間の蒸発を止めるのが私の仕事だ」
 「早く殺せ」
 「急ぐな。いつでも殺せる。なにをおもって人をさらったのか」
 「腹が減ったからだ。食料として人間がちょうど良かったからだ。味はよくなかったが」
 「まずいのに食べていたのか。普段はなにを食べているのか」
 「この世界に該当する言葉がない」
 「お前はこの世界のものではないのか」
 「ああ。他の世界から来た。落ちてきたところ、そこに浮かんでいる月に引っかかったのだ」
 「帰りたいか」
 「当然だ」
 「ならば、力が及ぶかわからないが、便宜を図ってやろう」
 「なぜだ」
 「殺すのは好きじゃない。助けてやるが、そのあいだ決して人を食うなよ」
 「わかった。頼んだ」
 フォグラントは巨大蜘蛛を助け起こすとひとまず月に返しました。
 オアシスにむかって歩くフォグラントに猫はいいました。
 「殺さなくて良かったのか」
 「良くはないだろうが、殺すのは好きじゃない。嫌いだ」
 「それはあの男、お前の故郷で反乱を起こした側近に対する態度でもあるのか」
 「そうだ」
 「お前は殺さないのが好きなんだ。ところであの蜘蛛を帰すあてはあるのか」
 「まったくない」
 「では教えてやろう。この砂漠には天空に至る道がある」
 「ありがとう。でも殺さないのが好きなわけでもないんだ」

ゆらぎの神話についてこちらをご覧下さい。
http://bothhands.at.webry.info/200704/article_6.html
この企画の遊び方についてはこちらをご覧下さい。
http://bothhands.at.webry.info/200704/article_7.html

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