シーシュポスの勝利

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zoom RSS フォグラントと反乱

<<   作成日時 : 2007/05/25 18:23   >>

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 今は昔、アエルガ・ミクニーという神様がいました。
 この神様はいたずら者で悪さばかりしていたのですが、格好の標的が人間という生き物でした。
 アエルガ・ミクニーは人間を大変気に入っていたので、四六時中、ちょっかいをかけました。
 今回のお話はアエルガ・ミクニーに騙された男の話です。
 この男は地方領主の側近でとても有能で、領民からも領主からも信頼の篤く、領主が王都にいくときは領主代行を任されるほどでした。
 領主の3人の息子のうち有能な長男と三男が死んで、ぼんやりしたお人好しの次男だけになったとき、領民のあいだに領主は後継者を息子でなくてこの男にするだろうと噂されたほどでした。
 この噂を男は消しました。というのは領主は身分相応でないと恥じたからでしたが、これをききつけたアエルガ・ミクニーは男に野心を吹き込みました。すると男の心に次男に対する嫉妬や軽蔑が湧いてきて、どうしても押さえようがなくなりました。あの御曹司は所詮運がよかっただけだ。生まれさえよければ私が領主となったのだ。
 それで男は領主に耳打ちしました。御曹司の人柄は好かれているが、能力は誰からも疑われているので、その実力を示さなくてはなりません。誰もが怖じ気づくような試練を、そう例えば、大地割れに潜む竜を殺させるような試練を与えるのがいいかもしません。
 それはどんな勇者も生還できない無謀な試練でした。けれども領主は相次いで息子を失ったせいで心が弱っていて、側近の男のいうことを疑いもせずに受け入れてしまいました。
 こうして御曹司は大地割れへ竜を倒しにいったのですが、なんと竜を倒して帰ってきました。御曹司は出迎えの領民に手を掲げました。その手には竜の鱗があり、日の光に照らされて、虹色の輝きました。お見事と領民は拍手喝采しました。領主も厳しい双眸に喜びの涙をためていましたが、ただ1人側近の男だけ陰で地団駄を踏みました。まさかあのぼんぼんが成功するとは。
 こうして側近の男の計画は失敗したのですが、次の企てを実行する機会はすぐに巡ってきました。というのは王の召集命令が出て御曹司は王都へいき、そのうちに領主にも召集命令がでて王都へいきました。この絶好の隙に側近の男は傭兵団を雇い入れて暴れさせました。
 側近の男の反乱に領民も兵隊も驚きましたが、殴られているばかりではいなくて、すぐに反撃しました。しかし長らく平和だったので領民も兵隊も上手く戦えず、戦争慣れした傭兵団にこてんぱんにされました。こうして領地は側近の男のものになりました。
 とはいえ領民は側近の男のものになったつもりはまったくなく、仕事をさぼって酒をのみ、側近の男を非難する歌を歌いました。側近の男は屈辱を感じて傭兵団に命令を下すと、傭兵団はあっというまに不埒な領民を牢屋に放り込みました。けれども領民はけっして側近の男に服従されませんでした。
 けれどもある日領民はぱったりと反抗を止めました。側近の男は従順になった領民に喜んで、祝宴を開き、酒やごちそうを振る舞いました。側近の男も領民も傭兵団ものんだり食べたりして気分良く過ごしました。
 すると側近の男は余興がほしくなりました。手を叩いて要求すると、領民が1人の旅芸人を連れてきました。
 この旅芸人はフードとコートで姿を隠していましたが、長い笛を持っていたので、楽師と知れました。
 側近の男は直々に演奏してみよと命じましたが、楽師は恐ろしげに拒絶しました。私には不相応ですと楽師は断りました。
 側近の男は高笑いしました。不相応なものか。おれは一介の小役人から領主になったぞ。次は王になる。お前もおれを見習って遠慮せずに演奏するがいい。
 楽師は一礼すると笛を吹き始めましたが、側近の男は吹き出しました。というのは恐ろしく下手な演奏で、楽器を一度も演奏したことのない者でもこれほどではないとおもえたほどでした。しかし側近の男は驚くことになりました。
 楽師の笛の音に合わせて領民の何人かが踊り始めたからでした。
 ぶおーという音に合わせて腕を上げ下げして、腰をふり、飛び跳ねました。
 側近の男は驚いて尋ねました。これは一体なぜなのか。お前は魔術師なのかと。
 楽師は首を横に振り、いいえ秘密はこの笛にありますと答えました。この笛を使えば、人を意のままに操れるのですが、私の腕ではこんな風に踊らされるのが精一杯です。上手い人であれば、何百人も操れて、なんでもやらせることができるそうです。
 すると側近の男の心に植え付けられた野心がうずきました。この笛を使えば、領民の反抗に気をもむことはないし、不平や不満をいう兵士に手を焼くこともないだろう。というわけで側近の男は笛を奪い取ると、一吹きしました。
 静かな旋律が空気に溶けました。すると領民はゆっくりと輪舞しましたので、側近の男は喜んで、激しい旋律を奏でました。領民は宙を舞うような跳躍の入った動きで踊り始めした。側近の男は気分をよくしました。
 笛が奏でられ、領民は踊り、傭兵団は酔いつぶれました。側近の男は笛を気に入って吹き鳴らし、領民とともに踊りながら練り歩きました。するといつのまにか郊外にでていました。このころになるともう日は落ちていて月が昇っていました。吹く風の音が寂しい時分でしたが、側近の男の心は愉快の極みで、疲れたのか静かになった領民に声をかけるべく振り向きました。しかしそこには誰もいませんでした。
 いいえ1人だけいました。件の楽師が立っていて、暗闇の中で月光を浴びてぼんやりと浮かび上がっていました。その足下には見たこともない獣が一匹いて鈴を転がすような音で鳴きました。
 ここで側近の男は気がつきました。お前は何者だ。正体を明かせ。
 側近の男は笛を突きつけてきたので、楽師はこれを奪い取り、めった打ちにしてやりました。そして姿を隠しているフードとコートを脱ぎ去りました。そこには王都にいるはずだった御曹司がいました。
 故郷が側近の男に占拠されたという報告を受けると御曹司はすぐに王都から戻り、領民を味方につけると、誰も死なないで事態を解決するために、領民と一緒に一芝居打ったのでした。
 呆然とする側近の男をみて、アエルガ・ミクニーは腹を抱えて笑いました。その笑い声は人間には聞こえないはずでしたが、あまりに激しすぎたのでフォグラントは空耳かと眉をひそめ、聞きつけた猫は怖気のあまり毛を逆立てました。けれどもアエルガ・ミクニーは笑いすぎてこれに気づきませんでした。
 こうして側近の男がとらえられ、傭兵団は姿を消し、御曹司と領主は帰還し、領地は平和な田舎に戻りました。
 しかし王都から早馬が来て、御曹司への召集命令を伝えたので、御曹司は平和を楽しめず、あわただしく再び旅立ちました。
 この御曹司の名前をフォグラントといいました。
 のちの1032英雄で、神殺しの王メクセトの率いられて、神々と戦いました。
 戦った神々の中には当然、アエルガ・ミクニーも含まれていました。


ゆらぎの神話についてこちらをご覧下さい。
http://bothhands.at.webry.info/200704/article_6.html
この企画の遊び方についてはこちらをご覧下さい。
http://bothhands.at.webry.info/200704/article_7.html

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