シーシュポスの勝利

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zoom RSS フォグラントの奪還

<<   作成日時 : 2007/05/24 17:10   >>

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 今は昔、竜が幻獣の王で猫が幻獣の王子であった時代のこと、フォグラントという男がいました。この男はお姫様と結婚することになっていましたが、その前日に誘拐されてしまいました。もっともフォグラントは結婚するのを嫌がっていたので、とても喜んでいるわけですが。
 フォグラントは相棒の猫にいいました。
 「私はあのいけ好かないお姫様を助けにいきたいとおもう」
 「あんなに結婚を嫌がっていたのに。なにがお前を心変わりさせたのか」
 そう応えたのはフォグラントの影でした。影に黄金の目玉が2個浮かんでいます。これは幻獣猫の目で、物好きな猫がフォグラントにつきまとっていて、普段は影の中に隠れていました。
 「王様でも子供がいなくなったら悲しむだろう。ましてや誘拐されたならば、その苦しみは尋常ではない」
 「なるほど。では、お前に教えてやろう。私は犯人を見ていたのだ」
 「待て。見てたんなら止めろって」
 「放っておいたらどうなるかなとおもって」
 まあいいとフォグラントは呆れつつも先を促しました。猫がいうのは、その夜、お姫様の寝所の窓が開け放たれていて、月が中天に昇ると、黄金の砂塵が入ってきて、眠っているお姫様をさらったそうでした。
 黄金の砂塵は砂漠のほうに飛んでいったので、フォグラントは王様と婚礼祝いに来ていた父親に許可を取ると、ただ猫一匹をともなって旅立ちました。
 「お前の父親がいつまでも見送っているぞ」
 フォグラントは3人兄弟でしたが、このうち2人はすでに死んでいました。
 「あの性格の悪いお姫様を本気で助けようとするのはあの王様くらいのものだ。王様の命令でも砂漠なんて辺境に派遣されたんじゃ手を抜くだろう。結局、私がいくのが一番良いんだ」
 「嫌っているわりにはいくんだな」
 「少しだけ友達になってしまった。結婚相手にはふさわしくないんだけどね。お互いに」
 このようにしてフォグラントは出発し、砂漠地帯にたどり着きました。乗ってきた馬をらくだに変え、砂漠の民と出会って砂上船に乗せてもらって、砂塵の逃げた先、砂の魔物巣へと行きました。
 砂漠の民はフォグラントと別れるとき、一隻の舟を貸し出しました。というのは砂の魔物の巣の周りは流砂で囲まれていたからでした。この浮かぶ舟で流砂の上を渡るようにという計らいでした。
 砂の魔物の巣は海に浮かぶ孤島のようでした。この孤島の部分に洞窟があってここに住んでいるようでした。フォグラントは舟を出しました。
 舟はすいすい動きましたが、流砂の中程で、フォグラントは止めました。猫が影から顔出して辺りをうかがいました。すると砂煙があがりました。
 舟の周囲から無数の巨大な柱が伸び、曲がって、その先端が舟を襲いました。
 木っ端に砕ける舟。フォグラントはすでに跳躍していて、そばの柱にとりつきました。その柱が震えだしたので、フォグラントは蹴って別の柱にとりつこうとしました。
 そんなフォグラントを柱が襲いました。フォグラントは空中で身体をひねってかわしましたが、このとき、柱の先端に無数の牙が生えた口があるのをみつけました。
 この柱のようなものは流砂に潜む大ミミズでした。
 フォグラントは回避運動のせいでものをおもう暇もありませんでしたが、猫は傍観者を決め込んでいたので、フォグラントがどうやってこの状況を切り抜けるのか興味深くおもっていました。
 フォグラントはミミズからミミズへと飛び移っているのですが、なにをおもったのか、明後日の方向へ跳びました。そこには足場にするものなどありませんでした。
 好機とばかりにフォグラントの前方からミミズが飛び出しました。
 残酷な口腔がフォグラントに迫りました。が、フォグラントは口の端を蹴ってさらに前方に跳びました。その着地地点もまた流砂で大ミミズが口を開けていましたが、やはりフォグラントは口の端を足がかりにして前方に跳躍しました。こうしてフォグラントは少しずつ島に近づきました。
 しかしあと一歩のところで大ミミズは背後から襲いました。しかしフォグラントは紙一重で裂けると大ミミズの背を走って助走をつけ大跳躍しました。
 こうしてフォグラントはなんとか砂の魔物の巣という島にたどり着きました。
 帰り道はどうするんだと猫が訊きましたが、そのときはそのときと答えてフォグラントは島にある洞窟に入りました。
 お姫様はいません。そもそも生き物のいる気配がありませんでした。奥にいくとフォグラントと猫は岩戸をみつけたので、隙間に剣を差し込んでこじ開けました。するとフォグラントは腕で目を覆い、猫は瞳孔を蠢かせました。そこには青空が広がり、目に痛いような草原が広がっていたからでした。
 突然の明るい空間にフォグラントは驚きながらも前に進みました。今まで酸欠気味だったので空気が新鮮でした。
 さらにいくと森が広がっていました。森の中に小川があって遡ると一軒の小さな家がありました。フォグラントは窓に近寄ると覗きました。中に女が1人いるようでした。
 件の悪いお姫様だろうかとフォグラント。
 かもしれないが入ってはいけない。一歩踏み入れた瞬間、家が罠に変わって食べられてしまうぞ。と猫。
 しかしすでにフォグラントは中に入っていました。
 家にいたのはやはり件のお姫様でした。フォグラントとお姫様は再会を驚きましたが、実に微妙な気持ちでした。というのは連れ帰ったらお互い望んでいないのに結婚しないといけないからでした。
 「性格の悪いお姫様。あなたをさらったまものはどうしたのか」
 「誰が性格悪いというのか。あの魔物はさらわれた晩に殺したぞ」
 「!」
 どうやってとフォグラント。お姫様がいうには、魔物が大事にしていた宝物を自慢されたので、上手くおだてて借り受けると、それで殺したそうだった。その宝物というのは巨人の耳かきといって、土や砂を操る力があって、砂塵の姿の魔物を小石にしてしまったのでした。今、魔物はお姫様の右手人差し指の指輪になっていました。
 こうしてフォグラントと猫とお姫様は王都に帰ることになりました。帰り道を塞いでいる流砂は巨人の耳かきの力で、海を割るようにして道をつくって、退けました。3人は大ミミズのわきを通り、、砂漠の民と出会って砂上船に便乗すると、この途中でフォグラントを追いかけてきた兵隊と合流しました。
 このようにフォグラントは王都に生還したのですが、父親が病床にあって動揺しました。
 この父親は地方領主でした。
 フォグラントと父親が領地を離れているあいだに領地が乗っ取られてしまったのでした。
 王は婚礼を先延ばしにすると、フォグラントに領地の奪還を命令しようとしましたが、もうこのときにはフォグラントと猫は故郷目指して街道を突っ走っていました。

ゆらぎの神話についてこちらをご覧下さい。
http://bothhands.at.webry.info/200704/article_6.html
この企画の遊び方についてはこちらをご覧下さい。
http://bothhands.at.webry.info/200704/article_7.html

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